エンジンからカタカタ音がする
ライダーの皆さんが乗っている愛車のエンジンはカチカチする音は鳴っていませんか?
私のスーパーカブ110(JA44)も新車で納車された頃は大変静かでした。✨
時が経つと走行距離もどんどん伸びていき、その間にもマフラーやエアクリーナー、そしてエンジンなどにも手を加えてカスタムパーツなどを取り付けて楽しんでいましたが、いつの頃からかエンジン前方部のシリンダーヘッド付近からカタカタやカチカチという甲高いメカニカルノイズがマフラーの排気音よりも大きくなっている事に気付いてしましました💦
アイドリング中だけでなく走行中も結構気になります…
文字では伝わりにくいので動画にしてみました♪
この音を聞いていると金槌で釘を小さくコンコンと打ち付けている様な音に近いかも!?
この独特なカチカチ音はタペット音に違いない!
今回は、この大きくなったタペット音を直したいと思います✨
カチカチ音では無くガラガラ音だとプッシュロッドのゴムが怪しい可能性が有ります。
プッシュロッドのゴムの交換は以前の記事で紹介しています。
タペット音が発生する原因

上の写真はスーパーカブ110(JA44)の純正カムシャフトです。
シリンダーヘッドの中にあるカムシャフトには吸気(インテーク)側と排気(エキゾースト)側のバルブをうまく解放するために計算されて造られた水滴マーク💧の様な山がシャフトの軸に造形されています。

赤丸の線が真円のラインで、それよりも外に飛び出した緑の線がバルブに動きを与える作用角の部分です。
緑の矢印の山の大きさはリフト量と言われており、リフト量が低い(Lo)とトルク向きでリフト量が高い(HIGH)と高回転向きになります。
エンジンチューニングの定番部品で聞くハイカムとはまさにこのリフト量が高いハイリフトカムシャフト(ハイカム)の事です。
実は私のスーパーカブ110(JA44)もTAKEGAWAのハイカムに交換してます♪
スタートダッシュ直後の加速は明らかに純正カムの方がパワフルで乗りやすいですが、高回転域からはハイカムの方がグイグイ引っ張ってくれます✨

上の写真はスーパーカブ110(JA44)のヘッドシリンダーの様子です。
カムスプロケットの軸の先にはカムシャフトが固定されており、カムシャフトが回転する事で2本のロッカーアームが吸気(インテーク)バルブと排気(エキゾースト)バルブに開閉する動きを伝達してくれます。
動画ではロッカーアームの先端に付いているタペットとバルブ先端のバルブステムエンドの間に隙間があります。
この隙間が広いとカチカチ音が大きくなり、隙間を狭くすると音が小さくなる事が分かるかと思います!

なるほどね~♪
隙間あるから音がなる…それなら…
隙間を完全に無くしちゃえば音が消えて良いんじゃないの?
※バルブクリアランスの隙間は車種ごとに規定値がありますので必ず守ってください!
クリアランスを必要以上に詰め過ぎるとバルブが閉じきれずエンジンの出力が大幅にパワーダウンします。
最悪の場合はバルブとピストンが衝突してエンジンブローします!
バルブクリアランスの隙間が広いとタペット音は大きくなりますが、狭いよりも広い方がエンジンへのダメージは幾分小さいです!
※スーパーカブ110【JA44】の場合は吸排気とも規定値は0.10mm±0.2mmです
バルブクリアランス調整(タペット調整)
※本来はフライホイールにマーキングされている吸気と排気バルブが共に動かない上死点の位置に合わせてタペットを調整します。
しかし、今回はそれぞれのロッカーアームが動かない位置を見計らって調整する我流の方法で調整を行っていますので参考にされる方は自己責任でお願いします。
必要な特殊道具
通常のドライバーやレンチ以外で必要な道具を紹介いたします。

上の写真はシクネスゲージです!
シクネス(厚み)やシックネスという名の通りの厚みを測る工具で、隙間ゲージとも言われています。
シクネスゲージはバルブクリアランス調整時の必須アイテムです!

薄いシクネスゲージの方は厚みの種類が少ないですが、軽くて使いやすいです。
厚いシクネスゲージは重さが有りますが、何枚も種類があるので幅広い厚みを測る事ができます。
シクネスゲージによっては小数点の表記が違ったり、プレートを1枚だけ分離出来たりと機能性が若干違う物がありますので、ご自身が一番使いやすそうなシクネスゲージを選ぶのが良いかと思います✨
適材適所ですね♪

こちらはタペットアジャストレンチです!
タペット調整する際に役立つ専用工具です。
必ず使わなくても作業できなくはないですが、これがあるとタペットの位置調整時にかなり便利です!
どちらかと言いますと時短アイテムに近いかも?
最後のロックナットの締め付け時にタペットの供回りを抜群の位置で決めるテクニックがある方なら、通常のレンチだけで作業する事は可能です。
シリンダーヘッドを分解する前に
本記事では記載していませんが、レッグシールドが邪魔になるので先に取り外しておきます。
※作業中はオイルが垂れるので、ウエスなどを車体に下や周辺に敷いておいた方が良いです。
クランクケースのキャップ【取り外し】
フライホイールを手動で動かす為にクランクケースの左カバーのキャップを開けようとしています。
キックペダルだけでもフライホイールは動かす事ができるのでキックペダルで調整する場合はシリンダーヘッドカバーの取り外しまでジャンプしてください。

レッグシールドを取り外した状態です。

10mmの六角レンチでクランクケースの左カバーに付いているキャップを外します。

キャップを取り外すとフライホイールナットが見えます。
これ回すとクランクシャフトも供回りしてカムシャフトの作用角の位置も動かす事ができます。
写真の若干右上にある銀色のキャップにはフライホイールにピストンの位置を確認できる窓があり、6mmの六角レンチで外す事ができます。
シリンダーヘッドカバー【取り外し】

次にシリンダーヘッドカバーを外していきます!

10mmのソケットレンチで緩めていきます!

2本のボルトが外れました!
これでシリンダーヘッドカバーを取り外す事ができます。

ヘッドシリンダーの中が見えるようになりました!
これでバルブクリアランスを調整する準備ができました♪

取り外したシリンダーヘッドカバーの赤丸の所か、ヘッドシリンダー側にノックピンが1つ付いています。

ノックピンは小さくて無くしやすいのでご注意を!
分かりやすい所に退避させておいた方が良さそうです。
ロッカーアームとタペット【動かし方】


吸気(インテーク)バルブと排気(エキゾースト)バルブのクリアランス調整をします。
調整方法は大体どちらも同じなので、今回は吸気気(インテーク)バルブの方を記載してあります。

レンチでフライホイールを直接回転させてロッカーアームが動かない位置を見つけるか、キックペダルを動かしてワイルドに位置調整する事も可能です。
細やかに動かすなら前者、手っ取り早く動かすなら後者
動きが分かりにくいので動画も作りました♪
青い矢印の時はロッカーアームは全く動いていないの調整可能な位置です。
赤い矢印の時はロッカーアームがバルブを押し込んでいる真っ最中なので調整不可能な位置です。

調整可能な位置に調整できたら8mmのロックナットを緩めます。
ボックスレンチでも普通に回せますが、タペットアジャストレンチがあると楽に届きます♪

ロックナットも緩みタペットはフリーに動かせる状態になりました。

ちなみに純正のロックナット(約1.5~2g)からチタンナット(0.58g)に交換するとかなりの軽量化をする事ができます✨
例えば500mlのペットボトルと1500mlのペットボトルを手に持って振り回すと疲れ具合が違うのと同じで、ロックナット自体は重くは有りませんがエンジンを高回転で回すとGによる負荷の影響もあるのではないかと思われます。
※私の手持ちの重量計では小数点以下の単位が測れないのでそれ以下の実際の数値は分かりません。
しかし純正ナットを乗せると2gを表示していましたので恐らく(約1.5~2g)付近ではない

タペットアジャストレンチのハンドルシャフトを使うと簡単にタペットだけを回す事ができます♪
シクネスゲージの調整目安

シクネスゲージをタペットとバルブの隙間に挟み込むように通してバルブクリアランスを調整します。
吸気(IN インテーク)と排気(EX エキゾースト)両方とも規定値は0.10mm±0.2mmです。
タペットとバルブの間にシクネスゲージのプレートを挟んだ時に手で感じる調整の目安は以下のような感じです。
挟まれている抵抗感を全く感じない プレートが落下する | ✖隙間が広すぎる✖ 再調整が必要 |
少し挟まれている抵抗感を感じるが、 手を離すとプレートはゆっくり滑り落ちていく | ▲隙間が若干広い▲ できれば再調整した方が良いかも |
挟まれている抵抗感を感じる、 プレートは落ちないが少しの力で引き抜ける | ●ジャストポイント● 調整は完璧! |
挟まれている抵抗感を少し強めに感じる、 力を込めないとプレートは引き抜けない | ▲隙間が若干狭い▲ できれば再調整した方が良いかも |
挟まれている抵抗感をかなり強く感じる、 本気で力を込めないと引き抜けない又は抜けない | ✖隙間が狭すぎる✖ 再調整が必要 |
タペットのジャストポイントな位置を探し出したらなら、シクネスゲージのプレートを差し込んだ状態でロックナットを完全に固定し、再度プレートを動かした時の手ごたえが同じくらいならバルブクリアランスの調整は完了です!
☆ロックナット締め付け時のテクニック☆
ロックナットを締めこむと予想よりも隙間が狭くなる傾向になる事が多かったので、理想の隙間よりほんの少し隙間を広く取っておくとロックナットを締め付け終えた後に良い具合に隙間が調整できている事が多かったです♪
逆手順でシリンダーヘッドを組み直す

ロックナットでタペットを固定した後は、キックペダルやフライホイールを手動で動かして隙間が広すぎたり、ロックナットの緩みがないかなどの異常が本当に無いのか最終確認します。
後は逆手順でシリンダーヘッドを組み直します。

シリンダーヘッドカバーを取り付ける際にパッキンが噛み込まないように注意を!
劣化している際は交換してください。

ノックピンの取り付けもお忘れなく!

シリンダーヘッドやキャップも無事に組み直した後はオイルの入れ忘れやオイル漏れがないかよく確認してください!
エンジンはいきなり掛けずにキックペダルでオイルがエンジン内部に行き届くようにするのもお忘れなく♪
クリアランス調整後の結果
最後にエンジンを実際にかけてチェックします。
万が一聞きなれない異音が有ればすぐに止めてください!
冷えたエンジンが温まるまでタペット音が少しするかと思いますが、温度が上がるごと金属パーツは膨張していくのでエンジンが完全に温まるとタペットクリアランスの隙間も理想状態になるのでかなり静かになると思います!
タペットクリアランスの調整前と調整後の動画です。
ハッキリと音の違いが分かります!

今回の調整途中で排気(EX エキゾースト)側を見た時、目で分かるくらい隙間が広がっていたの測ってみたらなんと1mmも空いていました!
これはカチカチと音が鳴るわけです💦
原因は私です!
以前タペット調整を行った時は既に日が落ちた暗い屋外で、次の日がツーリングでだったので間に合わせる為、若干の焦りと暗い手元の中作業していたのでシクネスゲージの0.10mmと1.00mmのプレートを使い間違えた可能性が有ります。
もう一つはロッカアームが上がり切っていない上死点から少しズレたところで作業してしまったのがミスの原因ではないかと思いました。
もしご自身で調整される際はシクネスゲージの選択間違いに十分ご注意ください!
最後に
バルブクリアランス調整(タペット調整)を行う事でシリンダーヘッド付近からのカチカチ音を限りなく小する事ができました!
バルブクリアランス調整(タペット調整)は精密作業ですのでミスのない様に落ち着いて作業を行ってください!
作業時はできれば日中か、明るいライトがあると良いです!
同じようなカチカチ音の症状になってるけど自分で作業するのが不安だと思われている方は絶対に無理をせず、お近くのバイク屋さんに相談してみる事をオススメいたします!
それでは快適なバイクライフを!✨